焼きアナゴの竹串――。
これは、ただの竹串じゃない。
会社の出資者であり、恩人でもある人の想いが詰まった、一本の竹串なのだ。
会社を立ち上げるとき、その人はこう言ってくれた。
「お前、これから何かと金がいるやろ。好きなように使え。」
そう言って、なんとポンと100万円を差し出してくれた。
あの時の重みは、今でも忘れられない。
だからこそ――。
この竹串のビジネスだけは、絶対に成功させたい!
その思いで、中国からの輸入に全力を注いだ。
ところが現実は、そう甘くなかった。
依頼したのは長さ24cmの竹串。
ところが届いた商品を見て、目が点になった。
25cmのものもあれば、23cmのものもある。
先端はトンガっていないどころか、丸くボソボソ。
まるで「割り箸をそのまま突っ込んだ」ような仕上がりだった。
「これじゃ、焼きアナゴの命がけの串打ちができん!」
頭を抱えながらも、諦めるわけにはいかない。
何度も何度も工場とやり取りを重ね、
時には飛行機に乗って直接現場へ乗り込み、
何度も竹のサンプルを削り直してもらった。
――そして、ついに。
ようやく納得のいく品質の串が完成!
「これならいける!」と胸を張り、初めての輸入を決行。
だが、安心したのも束の間。
船便が届き、検品してみると――
……またしても、とんでもないことが起きていた。
(つづく)