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公開日:2025.10.08
創業者の歩み・思い 起業について

焼きアナゴの竹串が、倒産寸前の会社を救った話

あの阪神・淡路大震災が、すべてを揺るがした。

神戸港は使用不可。
やっと見つけた食料品の輸出ルートも、完全にストップ。
しかも、追い打ちをかけるように円高の波。
「もうダメだ…」と、頭を抱えるしかなかった。

会社を畳む――それが最良の選択だと、
半ばあきらめかけていた頃だった。

そんなとき、入居していたビルが“半壊”と査定された。
するとどうだろう。
保証協会や国民金融公庫が、思いのほかスッと融資に応じてくれたのだ。

「これは、もしかすると…もう一度立ち上がれということかもしれない。」
そう思い、私は新たな事業を必死に探し始めた。

ちょうどその頃、
長年お世話になっていた“焼きアナゴの店”の社長から、一本の電話が入る。

「中川さん、アナゴの竹串を中国から輸入できんやろか?」

最初は、耳を疑った。
竹串? しかもアナゴ用?

だが、輸出がダメなら輸入に賭けるしかない。
私はすぐに動き出した。

知り合いを頼り、夜も眠らずに連絡をとる。
そして――ついに見つけた!
中国の工場に、見本を持ち込み、竹串の試作を依頼した。

……ところが、ここからが本当の苦労の始まりだった。

品質、太さ、長さ、焼き加減に耐える強度――
どれをとっても一筋縄ではいかない。

まるで、一本の竹串に運命を試されているようだった。